ほほえみのもと

子育てから自分育て、笑顔の手前のほほえみのもとになれたらいいな

ズルしても勝ちたい子ども

10年くらい前に小学生と幼稚園児の2人を育てるシングル親の家庭に遊びに行ったことがある。

下の子が小学生になるというタイミングで、お祝いの品を持って行きがてら、おうちで子どもたちと遊ばせてもらった。


最初は家族3人+私の4人で人生ゲームを。

進むにつれて、上の子がドンドン進み、下の子が遅れがちに。

それは、ゲーム上仕方の無いことなのだが、下の子は面白くない。

順番的には、上の子・親・下の子・私なのだが、家族でビリが嫌だという。

だんだん荒れてきて、ゲーム上の銀行のお金や、何らかの券などをばらまいた。

上の子や親はこういう事が多々あるのか、拾っては「やめて!」を繰り返し、なんとか続行しようとするが、どうにも進まなくなってきた。

ずーっと黙っていた私が「どうしたいの?」と聞くと「勝ちたい」という。
「こんなことしてまで、勝ちたいの?」と聞くと黙る。
しかも、もう、ゲームの駒となるモノも持ち券も、家族分全部ばらまいた後なので、修復も大変。(まぁ自分の分を修復すれば続行できると言えばできるけど)

で、「このゲームはやめようか?」と私が言うと、3人ともびっくりする。
多分いつもは、なんとか修復して、なんとなく続けて、荒れまくりながらも、何らかの結末を迎えるのだろう。

それを、私は中断の道を示した。

3人とも続けたいと言ったので「じゃあ、次にぶちまけたら終わりね」と言ってみんな納得して続けたが、いつもの癖なのか、またぶちまけた。
なので、私は「ぶちまけたので終わりにします」とサッサと片付けた。

3人とも、え?となったが、上の子と親は「ぶちまけたもんね」と、切り替えた。
下の子は、ぽかーん。
いつもはズルしまくって勝ちに持っていくのかな?と予想しながら、サッサと片付けた。


その後、食事をして、親が「マンカラやれば?」と下の子に促した。

私はルールを知らなかったが、下の子が「教えてあげるよ!」と嬉々として言うので、素人相手なら勝てると思っているのかと、やることに。

やっているうちに、ルールも理解したが、それにつれて、下の子の動きが変だということにも気付く。

ズルをしまくっているのだ。

しかも、ズルするときにチラチラ私を見る。

なので、気付かないふりをした。

そして、下の子が勝った。

勝った瞬間に「ズルしなくても勝てたんじゃない?」と小さい声で下の子にだけ聞こえるように言ってみた。

下の子は「勝っ(た)!」と大声で言いかけたけど、その私の声を聞いた瞬間、固まった。

親と上の子は「どっちが勝ったの?」と聞いてきて、私が当然のように下の子を指差すと「良かったね!」と言うが、喜ばず固まっている下の子に「どうしたの?」と。

下の子は「別に」と言いながら片付けてしまった。


その後は、ゲームをしなかった。


そして帰るとき、「また来てね!」と言われたけど、行く機会がなく今に至る。



小学生になり中学生になった下の子は、その後、チーム戦の部活で活躍するようになったと聞く。


あの時の小声のことは上の子にも親にも言ってない。


どうやら、あの時からズルをしなくなったようだ。



ズルをしなくても勝てると知ったら、その方が良いもんね。